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2021年11月17日

寂聴さん「天晴れ!」なり99年の生涯& 舟木一夫 嵯峨野雪草紙


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「一人歩き続け、野に果てる人生を」 瀬戸内寂聴さん現世に別れ  (毎日新聞)

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作家として、尼僧として時代を駆け抜けた瀬戸内寂聴さんが9日、現世に別れを告げた。10月上旬に体調を崩して入院。一時退院後、再び入院していた。結婚、出産、駆け落ち、そして出家。99年の生涯で自身の生き方と重ね合わせた多くの小説、エッセーを発表する傍ら、社会的な運動にも積極的にかかわった。波瀾(はらん)万丈の人生は、小説に人間的な血肉を通わせ、多くの読者の共感を得た。

 瀬戸内さんが作家の地位を確立したのは、先駆的な女性文人たちの伝記小説だった。日本のフェミニズム文学の先駆者で、女の自由な愛のかたちを求めた田村俊子。漫画家の夫、岡本一平の寛容な愛を受けながら、別の男とも同居し、才能を開花させた岡本かの子。「美は乱調にあり」では、伊藤野枝と大杉栄を取り巻く複雑な愛と革命を描いた。共通するのは、日本女性に求められた道徳や因習にとらわれず、自我に目覚め、男を強く愛しながら男に依存せず、情熱的に生き抜いた女性であり、それは同時に瀬戸内さん自身でもあった。

 ベストセラー作家として波に乗っていた時期の突然の得度は、世間を仰天させた。得度式の5日後、瀬戸内さんは本紙に手記「念願成就」を寄せている。剃髪(ていはつ)の瞬間を「いささかの不安も危惧もなかった」と振り返り、「私の生きて来た50年の歳月のすべてに、出家の動機の仏縁は御仏(みほとけ)の手でひそかに結びつけられていたのであろう。私の今後の生き方でしか、それは人に示すことが出来ないのではないだろうか」とつづった。そして瀬戸内さんは、「今後の生き方」で見事に出家の意味を示した。

功績の一つが「源氏物語」現代語訳の完成だ。13歳で与謝野晶子訳に出会って以来、「源氏」は座右の書だった。瀬戸内さんは、光源氏と関係を持った女性の多くが出家していることに着目。さらに、宮中の権力争いを現代の出世競争などに置き換え、自らの出家体験を踏まえて現代社会にうまく照らし合わせた。その作業、約6年。「今までの現代語訳の中で最も分かりやすい」と大ベストセラーになった。

 また、忘れてならないのが、瀬戸内さんの社会活動だ。「徳島ラジオ商殺し事件」では、容疑者とされた被害者の妻、故・冨士茂子さんを支援。故・市川房枝さんらと支援組織を結成し、死後再審、無罪となるまで26年間、冨士さんとその親族を励まし続けた。事件現場と実家がすぐ近くという同郷の縁だけでなく、冨士さんの犯行動機を「内縁の夫の女性関係に対する嫉妬心と将来への不安」と決めつけた検察への不信が、瀬戸内さんを立ち上がらせた。連合赤軍事件の永田洋子元死刑囚(故人)との書簡交流を通して、死刑廃止論の立場を唱えた。著作には「なぜなら、自分もまた表だって罪をおかさないだけで、心は罪でみちみちているからだ」と書かれている。出家して悟った心の表れだった。

2011年に東日本大震災が起こると、被災地を訪ねた後、岩手県二戸市で雨の中集まった約3000人を前に法話を行った。時に89歳。「私たちは必ずいつか一人になる。他人に流されず自分の信念に沿ってしたいことをして生きていれば人生が自然に開ける」と説いた。

 さらに、福島第1原発事故を機に脱原発運動に取り組み、高齢の身を押して集会に参加した。13年に成立した特定秘密保護法を巡っても、反対を表明。押しも押されもせぬ大家になり、文化勲章を受けても、国家に対して言うべきことは言う姿勢を貫いた。

小説やエッセーのみならず、瀬戸内さんの語り口に癒やされる人も多かった。寂庵(じゃくあん)と天台寺で開かれた法話には毎回、全国各地から会場に入りきれないほどの人が訪れ、笑い、涙した。寂庵での法話は20年1月開催後、中断していた。

「十分に生きた我が一生でした」
 21年5月には自身の公式インスタグラムで、99歳の誕生日を病院で迎えたと報告。退院後に寂庵スタッフとシャンパンをあけて誕生日を祝う動画が公開され、「99歳まで生きて、長すぎた一生だと思います。様々なことを人の何倍もしてきました。全てに今は悔いがありません。十分に生きた我が一生でした」とコメントを寄せていた。7月にはリハビリ後にスイカをほおばる動画、8月にはマスクを額にずらしてカメラ目線でほほえむ写真が投稿され、その後更新が途絶えていた。

 「人間は愛に始まり、愛に終わる。でも、人間は生まれながらにして孤独なのです」。そう言って全国各地の講演、法話で語り続けた。一遍上人の「されば人と共に住するも独(ひとり)なり」という言葉を愛し、「一遍上人のように一人歩き続け、野に果てる人生を送りたい」と願っていた瀬戸内さん。人間の愛と孤独を平易に説いた「寂聴節」は、これからも記憶されるだろう。


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☆寂聴さんの著書との初めての出逢いについて

IMG_20190402_0001私が寂聴さんの著作に最初に出逢ったのは、二十歳になる少し前、定期購読していた「婦人公論」に連載(1971年1月号~72年3月号)されていた「余白の春」です。特殊と言えばかなり特殊な生き方をした金子文子という女性の伝記で、当時の私にはかなり難解でしたが、連載ものなのでなんとか最終回まで読めました。


*金子文子について
関東大震災後の混乱の中、大杉栄・伊藤野枝だけではなく多くの社会主義者・無政府主義者が捕らえられた。金子文子と民族主義者・朴烈も「保護検束」の名目で逮捕され、大逆罪(皇太子暗殺計画)で死刑を宣告された。

韓国で映画化され(2017年公開)日本でも2019年にミニシアター系の映画館では公開されています。




☆瀬戸内寂聴(作家、尼僧)コメント

東京の道端で、金子文子がいきなり朴烈に求愛する場面で開幕するこの映画は、二人が大逆罪で終身刑になるまで、息もつかさせない程の緊張感で、観客の心を捕えて放さない。
文子役のチェ・ヒソの情熱的な演技と全身で放つ肉感的魅力に圧倒される。
二人を「余白の春」という小説で書いている私には、格別な感動だった。



☆寂聴さんの残した膨大な数の作品の中で、私が読んだ著作



KIMG0093『夏の終り』(自伝的私小説)

『女徳』(高岡智照評伝)

『かの子撩乱』(岡本かの子評伝)

『美は乱調にあり』*(大杉栄・伊藤野枝 評伝)

『煩悩夢幻』(和泉式部評伝)

『鬼の栖』
(宇野浩二、竹久夢二など大正の文化人が利用した本郷菊富士ホテルが舞台)


*ちょっとした記憶

「鬼の栖」を原作にしたTVドラマ「ぎんぎんぎらぎら」1968/12/16~1969/02/03放映
出演:岩下志麻/佐藤慶/田村正和/乙羽信子

国文学者の愛妾萩原ゆりと一大学生の不倫の恋を描いた小説。多分国文学者が佐藤慶さん、萩原ゆりが岩下志麻さん、大学生が田村正和さんだったよう。正和さんが出演していたので観ていたのですが、内容はあまり覚えてないです。なんせ、当時まだ高一でしたから…。



舟木一夫 宵待草  詩:竹久夢二


サザンカB『祇園女御』(評伝)

『遠い声』(管野スガ評伝)

『余白の春』(金子文子評伝)

『中世炎上』(後深草院二条の日記「とはずがたり」の小説化)


『諧調は偽りなり』(*「美は乱調にあり」の続篇)


kono『ここ過ぎて 北原白秋と三人の妻』

*ちょっとした補足

寂聴さんが1984年に発表した長編小説を原点に映画化されたのが「この道」(2019年1月11日公開)まだ二年半ほど前のことです。これは映画館へ観に行きました。


舟木一夫 城ケ島の雨 詩:北原白秋




『青鞜』

『女人源氏物語』全5巻 

『わたしの樋口一葉』(単行本)

『炎凍る 樋口一葉の恋』(「わたしの樋口一葉」の文庫版)



☆そして、なんといっても別格は…

『源氏物語/現代語訳』全10巻(全54帖)
巻一刊行は1996年12月。1998年4月に巻十刊行、同時に全十巻セット発売。

大型


本屋さんに予約して全10巻、リアルタイムで購入してきちんと読みました。
頑張ったぁ~。でも、それから何度も引っ越したので大型本は場所を取りますから古本屋さん行きになって今は手元にありません。それ以後、「新装版」「文庫版」も出版されて今は、ネットでも簡単に手に入ります。

巻一(一~五帖) 桐壺/帚木/空蝉/夕顔/若紫
巻二(六~十一帖)末摘花/紅葉賀/花宴/葵/賢木/花散里
巻三(十二~十八帖)須磨/明石/澪標/蓬生/関屋/絵合/松風
巻四(十九~二十四帖)薄雲/朝顔/乙女/玉鬘/初音/胡蝶
巻五(二十五~三十三帖)蛍/常夏/篝火/野分/行幸/藤袴/真木柱/梅枝/藤裏葉
巻六(三十四帖)若菜上/若菜下
巻七(三十五~四十三帖)柏木/横笛/鈴虫/夕霧/御法/幻/雲隠/匂宮/紅梅
巻八(四十四~四十七帖)竹河/橋姫/椎本/総角
巻九(四十八~五十帖)早蕨/宿木/東屋
巻十(五十一~五十四帖)浮舟/蜻蛉/手習/夢浮橋

*54帖の中でも「雲隠」は題のみで本文が伝存しない。

*橋姫から夢浮橋までが宇治十帖

☆浮舟
「浮舟」…ピンとくる人にはピンとくる…舟木一夫さんの後援会の会報の名前と一緒


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源氏物語第51巻の巻名。また、その女主人公の名。宇治の八の宮の娘。薫かおる大将・匂宮におうみやの二人との愛に苦しみ、宇治川に入水するが、横川僧都(よかわのそうず)に助けられて尼となる。


☆蛇足かもですが…一応

源氏物語…といえば「もののあはれ」

*wikipediaより

もののあはれ(もののあわれ、物の哀れ)は、平安時代の王朝文学を知る上で重要な文学的・美的理念の一つ。折に触れ、目に見、耳に聞くものごとに触発されて生ずる、しみじみとした情趣や、無常観的な哀愁である。苦悩にみちた王朝女性の心から生まれた生活理想であり、美的理念であるとされている

「もののあはれ」は、江戸時代後期の国学者本居宣長が、著作『紫文要領』や『源氏物語玉の小櫛』などにおいて提唱し、その頂点が『源氏物語』であると規定した。

宣長は『源氏物語』の本質を、「もののあはれをしる」という一語に集約し、個々の字句・表現を厳密に注釈しつつ、物語全体の美的価値を一つの概念に凝縮させ、「もののあはれをしる」ことは同時に人の心をしることであると説き、人間の心への深い洞察力を求めた。それは広い意味で、人間と、人間の住むこの現世との関連の意味を問いかけ、「もののあはれをしる」心そのものに、宣長は美を見出した 


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☆瀬戸内寂聴 現代語訳源氏物語についての私の想い

「源氏物語」は、終始その背景として「仏教思想」に貫かれているのですが、瀬戸内源氏は、さらに登場する女性たち心の裡(うち)に特に光を当てた現代語訳という印象です。

平安貴族社会に生を受けた女性たちは、自らの意思にかかわらず、我が身がおかれた世の流れの中で生きていくしか術がなく不満や怨みをもらすとしても、それはせいぜい婉曲に「歌で詠む」ということくらいだったのでしょう。

そんな中で現世からの逃避という渇望が生まれ「仏教思想」に救いを求めるという形になったことは容易に想像できます。

そういった女性たちの悶々とした想いを汲みとって現代語訳された瀬戸内源氏は、「ジェンダー」の視点から私も含めて広く現代女性の読者層の共感を呼び、支持されているのではないかと思います。

古典文学の最高峰という近づきがたい作品への扉を開くという行為の背中を押してくれました。「瀬戸内源氏」以前にも数多くあった現代語訳ですが「源氏物語」の読者層のすそ野を広げたという意味では特筆に値する貴重な成果だと言っていいかと思います。
なんたって、私でも面白く読めたんですから…


☆私が一番好きな寂聴さんの本


炎炎凍る 樋口一葉の恋   (岩波現代文庫)2013年刊行

作家の幸福とは/恋道中/江戸のふたり/八丁堀同心/なつ誕生/赤毛の少女/渋谷三郎/美登利〔みどり〕と一葉/許婚者〔いいなずけ〕/晴着/背信/菊坂の家/半井桃水/若葉かげ/『藪〔やぶ〕の鶯〔うぐいす〕』/三宅花圃/よもぎふ/逝く夏/片恋/日記の謎/雪の日/処女作『闇桜〔やみざくら〕』/醜聞/花開くとき

うらむらさき 樋口一葉『裏紫』をうけて
『裏紫』(樋口一葉)
うらむらさき 一葉をうけて

樋口一葉略年譜

あとがき
解説 眼が開かれたいくつものこと(田中優子)


*1996年11月に『わたしの樋口一葉』と題して小学館より単行本として刊行。
2004年には「炎凍る 樋口一葉の恋」として小学館文庫でも刊行されました。
「一葉」の作品、文体が大好きな私はこの単行本も刊行当時、即、購入して読みましたが、文庫は携帯できるのでそれも購入しました。
今、手に入りやすいのは、岩波現代文庫版かと思います。

このように単行本が何度も文庫として刊行され続けているのは寂聴さんの著作が世代を越えて読み継がれていることの証ですね。


☆最後は「曼陀羅山寂庵」と「孤独を生ききる」について


「悔いなく十分に生きた」と自分の一生を振り返って言える生涯、人としてこの世に生まれてこんな幸せなことはないと思います。小説や随筆、そして説法から多くのことを教えていただきました。

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嵯峨野雪草紙 舟木一夫
https://www.youtube.com/watch?v=qMjNix9a0Wk

2017年1月15日 石仏と雪 寂庵の庭

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寂庵◆曼陀羅山寂庵(まんだらさんじゃくあん)

1974年に京都・嵯峨野に寂聴さんが開いた寺院です。「写経の会」と「法話の会」を定期的に開催していました。
しかし、2020年2月からコロナ感染拡大のため「法話の会」も開催中止となってしまいました。

寂聴さんが、96歳になり366号で休刊した「寂庵だより」の第一号(1987年2月発行)



1987年2月第一号関西に住んでいた50代に入る少し前頃だったと思います。何作か寂聴さんの著作も読んでいてなにかの本で「寂庵だより」という通信を出されていることを知り購読を申し込みました。「寂庵だより」では、「法話の会」への参加申込も受付けていたので往復はがきで申し込みました。毎回、参加希望者がいっぱいでなかなか参加はむつかしかったのですが、運よく2回ほど抽選に当たりナマで寂聴さんの法話を聴かせていただくことができました。

でもとにかく満員でしたから(ハガキに番号が書いてあって若い番号の人は仏間に入れますが)戸は開け放してあるので私はお庭で立って聴きました。皆さんがご存知のまんまの明るく楽しい法話、まるで落語か漫談でも聴いてるかのように、寂庵は笑い声に包まれてなごやかでした。今も、敷地内のご自宅から敷石を踏んで法話の会場である仏間に向かって小走りに急ぐ活発な少女のような寂聴さんの姿が目に浮かびます。


そして、エッセーと呼んでいいのか法話と呼んでいいのかわかりませんが、小説とはまた違った含蓄のある寂聴さん独特の「孤独論~孤独を生ききる」もご紹介させていただきます。

「人はひとりで生れ、ひとりで死んでゆく。…」なるほどです。どうしようもなく真実で、現実です。その現実と「向かい合い、飼い馴らし…」読みながらうんうん、そうだよね~。当たり前でわかっていることなのですが、寂聴さんだからこそ説得力があります。目からウロコです。


◆「孤独を生ききる」1998年発行 光文社文庫

人はひとりで生れ、ひとりで死んでゆく。恋人がいても、家族に囲まれていても、しょせん孤独。群れていても、若くても、老いても孤独。ほんとうに自分が孤独だと感じたことがない人は、真に人も愛せない。孤独と向かい合い、飼い馴らし、新しい自分と出会える人だけが人生に輝く道を発見する。孤独を生ききるにはどうすればいいか。答えがこの本にある。

51LDg5umtSL目次
第1夜 孤独とは
第2夜 孤独との出逢い
第3夜 愛の中の孤独
第4夜 マイホームの中の孤独
第5夜 失った愛の中の孤独
第6夜 男の背中の孤独
第7夜 未亡人の孤独
第8夜 愛人の孤独
第9夜 別れなくても孤独―ある夜の手紙
第10夜 空閨の孤独
第11夜 男の方が孤独
第12夜 老いの孤独
第13夜 孤独を生ききる



ホテイアオイ



ホテイアオイには「恋の楽しみ」「恋の悲しみ」という相反する花言葉が付けられているそう

寂聴さんのご冥福を祈って合掌

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renge26tanpopo at 18:44│Comments(0)日記 

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