2022年03月08日
舟木一夫 新歌舞伎座・シアターコンサート れぽ(3/5)
ずいぶん遅くなってしまい、間が抜けますが…私自身の備忘録として記します。

舟木さんのトーク部分はピンク文字
一部
~オープニング
浪花の歌ごよみ
浪花の歌ごよみ
和服です。紫紺色(っていうのかな?)のひげ紬。右側の袖は白っぽいぼかしで、博多帯、素足に雪駄
着流しがステキです。
ようやく春めいてきた…と
ここ一、二年世の中ゴチャゴチャしていますが、そんな中『「上六(うえろく」まで来ていただきありがとうございます。
60周年といってもおおげさなことじゃなくて。
1部は「THE・時代劇」
若い頃から時代劇に縁が深かった。
新歌舞伎座が御堂筋の頃、最初の1ヶ月公演の舞台の記念曲 「若君風流」と、もう1つは「さくら仁義」
イントロが始まろうとする瞬間に、ちょっと、待った!とバックのアバウト9を振り返って。
「言い忘れたぞ」。客席に向き直って「ごゆっくりどうぞ」
若君風流
さくら仁義
最近よくステージで申し上げるのですが、流行歌のお客様は、歌い手に気を遣って下さる。
1曲1曲拍手して下さる…それは忘れて下さい。
歌い手が、手を叩いてほしいなと思ったらお辞儀をしますので。
僕が演ったお芝居の中から…ヒットしてる、していないは無関係に。
いい詩、いいメロディー、そんな歌が…いっぱい。もったいないから引っ張り出して。
右衛門七討入り
ああ桜田門
☆魔像
葵の剣
ああ、よかった。ちゃんと手を叩いてくれて。無視されたらどうしょうかと…
捨てがたい歌、可哀想になっちゃうこともいっぱいある。
ボクは、遠藤先生とまずめぐり逢い、船村先生とめぐり逢い。色んな事があって。
☆山路進一という方、覚えてらっしゃると思いますが「忘れないさ」「宗右衛門町ブルース」
映画で言えば…大作ではないけど大変に良くできた佳作といいますが。質の良いものはいつ歌ってもいい。
さて江戸っ子の歌、大阪でいうと浪速っ子の歌になるのでしょうか、結構多いのでここで3つばかり。
火消し若衆
喧嘩鳶
一心太助江戸っ子祭
「さあ、さあ、さあ、さあ…」こういう歌は、これくらいでやめておかないと…。舌かんじゃいそうだから。若い頃みたいに口がまわらなくなってきた(笑)
申し上げるまでもなく、時代劇の大ヒーロー!
銭形平次
☆マークの「魔像」「山路進一さん」のことを…
☆魔像
豪商・質両替商伊豆屋の一人娘園絵は江戸八百八町にきこえた美貌の娘だった。園絵は西丸御書院番頭の脇坂山城守の口ぞえで旗本神尾喬之助と縁を結ぶことになった。脇坂は喬之助とともに同じ直参戸部近江之介を推した。しかし、園絵は身分も力も喬之助より優ると見られていた近江之介を選ばず喬之助との恋におちたのだ。
叱られたんだね

魔像 作詩:土橋成男 作曲:山路進一
(セリフ)神尾喬之助 只今参上! お命頂戴・・・
大江戸の 大江戸の
町に白刃の 風が舞う
武士の意気地を 剣にかけて
命捨て身の 喬之助
大江戸の 大江戸の
闇にきらめく 虚心流
妻のなげきを 剣にかけて
拭う血しぶき 喬之助
(セリフ)十七番首 今宵頂戴・・・
大江戸の 大江戸の
空も曇るか 首供養
武士の誇を 剣にかけて
花と散り行く 喬之助
キャスト
神尾喬之助・茨右近:舟木一夫
お弦(右近の女房):光本幸子
園絵(伊豆屋の娘):葉山葉子
辰五郎:花柳喜章
大岡越前:柳永二郎
あらすじ

根岸の伊豆屋の寮に泥酔してあらわれた近江之介は美しい園絵とそのかげにある伊豆屋の大きな財産を得られなかった恨みを男らしくもなく伊豆屋のお内儀お豊にクドクドと言った。その近江之介の意地悪い執念も知らず喬之助と園絵は、互いの想いがかなったことを喜びあっていた。
新しく御番入りした神尾喬之助は古参の御番役たちにことごとく辛くあたられた。「朝の出仕が遅い」「古参の者にあいさつの仕方が足らん」あげくの果ては恋女房の園絵のことをひきだし嘲笑した。これは最古参の戸部近江之介がかげでけしかけていたのだ。
そして、一月元旦の席で、年賀の礼をつくしていないと十八人の前で喬之助はせめられた。それは今までにない悪罵悪口のかぎりであった。ただ平伏してたえていた喬之助の勘忍の緒は切れた。腹の底からの笑いと共にかってのもの静かな喬之助が憎悪と怒りに燃える男となったのだ。
喬之助は、近江之介を斬った。そして、他の十七人の御番役の首を討つことをちかったのだ。江戸城内での刃傷、しかも次々の御番役は討たれてゆく・・喬之助は時の町奉行大岡越前守や江戸の人々の同情を集めながらも、きびしい追手の目からのがれなければならない。江戸っ子の岡っ引壁辰の娘お妙のおかげで壁辰にかくまわれた喬之助は喧嘩を商売にしている浪人茨右近とその女房お弦と知り合う。お弦の機転で喬之助は離ればなれになっていた園絵とも逢うことができた。
この右近と喬之助、気性は陽と陰のちがいはあるが顔かたちが双子のようによく似ている。すなわち喬之助が二人になったことと同じだ。
さて、この右近の助けをかりて、喬之助の神出鬼没の働きが始まる。七人まで倒したのち、喬之助の前に手ごわい敵が待っていた。それは、この事件のために身分が危なくなった脇坂山城守と園絵の美貌に目をつけた刺客神保造酒だ。乱刃のなかで喬之助は大敵神保造酒を斬り、十七番首長岡頼母を討った。が・・喬之助自身も深手を負っていた。
☆山路進一さんが舟木さんに提供された楽曲一覧
舟木さんが「佳作」とおっしゃったのはまさに「言い得て妙」

初恋の駅
まだ見ぬ君を恋うる歌
ひとりになると
江戸っ子だい
北国の街
はやぶさの唄
東京は恋する
虹のむこうに
たそがれの人
夜霧のラブレター
磯浜育ち
やなぎ小唄
山のかなたに
今日限りのワルツ
ひぐれ山唄
雨の中に中に消えて
おやすみ恋人よ
帰る
淋しかないさ
幸せよ急げ
ふたりだけの街角(作詩:高峰雄作*舟木さん)
青春ドロボーイ
恋のお江戸の歌げんか
いつか来るさよなら

二部
~オープニング
紫のひと
曲とのコーデ?見るも鮮やかな紫のジャケットを、こんなに品よく着こなすなんてあらためてオドロキ。
喜寿だから紫?(笑)シャレもあるかもですが、ホントに美しい77才(喜寿)ウットリ
久し振り…と最初の一言を発してから、ステージの床に視線を落として…
雪が落っこちてる…と小さな紙の雪片を拾いながら、天井を見上げて…
「雪が降る芝居をやったんだろうね…」
どうしても気の毒な歌がある…今年は持ち歌で通そうと…いろんな歌を引っ張り出して…。
歌わないと叱られる歌はきちんと歌います。どうぞごゆっくり
花咲く乙女たち
くちなしのバラード
北風のビギン
ブルー・トランペット
星の広場へ集まれ!
続けて歌うとシンドイ…
ボクは基本的にせっかちなんで休まないで歌う…
歌い手によっては一曲歌ってはおしゃべりして…という人もいますが。
トシをとるというお互いサマに…
体からサイキン脂が抜けてホテルのランドリーバッグが開かない(笑)
新聞も2枚一緒にめくる…
バンドのメンバーも最近譜面がめくりにくくなったと言ったり。これは全員来ることですうから、どうぞ皆さんもお大事に…
抒情歌…これって結構小さい頃から接してるんですよね。「月の沙漠」「浜千鳥」…みんな抒情歌。四季の風景が…。ここは3ついい歌を並べてみようと。

初恋
夕笛
☆絶唱
こういう世界に出てくる「初めての恋」…壊れるようになってる。傷があるからその次に出逢った恋がうまくいく…
ここはちょっと遊んでいただこうと…
田舎の教会
トシは自覚した方がいいのか、忘れてる方がいいのか…
あとで歌いますけど、「キジュタチがいてボクがいた」(笑)
ひとつだけ自覚した方がいいのは「階段」ね。下駄で昇り降りが、アブナくなってきた。
チャコールグレイのジャケットにお着替え。
「懐かしい」というだけでは、とても届かない…皆さんと出逢った頃の歌。
修学旅行
君たちがいて僕がいた
学園広場
今、歌った歌から60年。もうちょいイケルかな~と(大きな拍手)
やるほうもタイヘンですが、お聴きになるほうも…。
今日も全員が上六周辺に住んでるワケじゃない、いろんな乗り物を乗り継いで…(笑)
50,60になってアレ何だろう?「日光写真」…これがわかるってのは…(笑)と「青春」て似てる。
気持ちですよ。若いんだと思えばあなたも二十歳…ウソつけ!(笑)
青春時代のシーンを思い浮かべてもらえれば。

北国の街
哀愁の夜
高原のお嬢さん
~アンコール
青春の大阪
青春の大阪
白のジャケットに着替えて再登場
舟木さんが客席にスタンディングを促して…明るく若々しくラストを飾りました。
持ち歌を育てて楽しんでいる舟木さん。その歌たちの成長を実感として目の当たりに味あわせてもらっている私たち。
声の衰えとか、若い頃の声質と変わったとか…そんなことはライブをメインにする歌い手には、それほど問題ではないように思っています。若い頃の感性をずっと維持し続けていれば、そして歌(作品)そのものへの限りないリスペクトがあれば、コンサートのクオリティは自然と積み上げられていくものだと…。
舟木さんのように常にステージに立って歌い手としての長い旅をファンと共に楽しみ、慈しみながら日々を重ねていればこそ、その声は歌唱力は衰えるどころか、艶と深みを増しているのでしょう。
一日でも長くステージに立って歌い続けていきたい…そして、そのためには、歌唱法を研究し、マイクも相性のいいものを選び…お客様にも自分にも満足のいくステージにするための努力を惜しまない。これぞ、プロフェショナル。情熱的に真摯に、真っ直ぐに突き進んでいく舟木さんの志。ステージから客席にしっかり届いていますよ。そして舟木さんのみでなく、その舟木さんの志を支え、輝きを添えるアバウト9の皆さんの力量にもいつも感服します。
ラストブロックの「青春の恋唄」たち。ピアノ、サックス、フルート、パーカッション、ギターなどなど、それぞれのソロ演奏にも聴き入ってしまいます。ナマのバンドで舟木さんの歌を聴く。これは、かなり贅沢な時間。心からの感謝を捧げます。
ただ、今も、戦火の中で辛く苦しく想いをされている多くの皆さん、やりばのない腹立たしさでいっぱいです。まだ出口が見えないコロナ禍もやりきれません。本当に手放しでナイス!とは言えない日々ですが、束の間、異次元、非日常の空間に身をおくことのありがたみを痛感しています。

☆マークの「絶唱」のことを…
2月に浜松アクトシティの通常コンサートでは、一部が「抒情歌」でした。
その中でも、やはりオープニングの「初恋」、ラストの「夕笛」「絶唱」は頂上に位置する作品。
今回の新歌舞伎座でも、二部のセンターに置かれた「初恋」「夕笛」「絶唱」は、圧巻でした。
特に私個人としては「絶唱」が、聴く度にどんどん高みにのぼっていく印象があります。
ファンの数だけ、マイベスト・ソングがあるのでしょう。
どのタイミングでそれぞれの作品に出逢ったか…というのもマイベストを決定づける要因かもしれませんが。
「絶唱」大好きが嵩じて、原作も読んでみて、なぜこんなにも私を惹きつけるのかわかった気がします。
小雪(和泉雅子さん)が、自分のことで順吉と園田の父親が言い争いをするのが辛くて耐え切れずに親の元(炭焼き小屋)へ走って帰ってくるのですが、家でも小雪の父親に叱られます。小雪のあとを追って炭焼き小屋へ向かう順吉の足音…小雪にだけ聞こえるのですが。小雪はさらに山の奥の祠に向かい、仏様の前で一心に祈りを捧げている場面。

そして、このシーンは、後に原作を読んだ時にハッと鮮やかに脳裡に甦りました。
小雪が信心深い純粋な少女であることは映像でもわかりましたが、原作を読んで「仏がこの世に(孤独な順吉のために)」遣わした運命的な存在だったんだと目からウロコでした。小雪は順吉にとって菩薩だったのだと。
ほぼ10年ほど前のブログ(2013年09月05日・記」)です。その一部を抜粋します。
『絶唱』その2・原作より(下)~私にとっての園田順吉(=舟木一夫)は初恋の人かも・・

~抜粋~
原作では、映画を観ただけでは知り得なかった、小雪の出生の秘密が、最後に山番の夫婦である小雪の両親から語られます。その秘密は順吉の文学の仲間であり、原作の『絶唱』では順吉と並んで一人称でも登場する大谷に小雪の出生について打ち明けられています。
~「こみいったことって何です?・・私は誓って秘密を守りますから、どうか及ぶ限りのお力にならせて下さい。では私のほうから質問しますが・・つまりそれは小雪さんのことでしょうか」
「先生さま、わしらウソをついちょりました。これ以上卑怯だと、大罰があたりますけに」
何度も何度もいいよどんで、やっと母親のさとから聞き出したのは・・
「うららも、あの子が生まれた年に三カ月はよう、うららの子を生みましたけに、ところめが、赤児の肥立ちが悪うて、四十日しか生きて居ってごしませなんだ。うらら、息のきれた赤児を抱きづめで、はやもう気が狂わんばっかで・・それをお父がむりにもぎとって葬ってごしましたけに・・」さとの「皮切り」に勇気をとり戻した正造は・・
「それから、山に雪がはじめて降った日に、山まわりをしたわしは・・」と語りはじめた。
正造によれば
「女の身重のお遍路さんを助けた。安産をした、お遍路さんはさとの赤児が死んだのを聞いて同情して、そんなら私の子をと、助けられたお礼として赤児を譲ってくれたのだという。夫婦は「お大師さんのお授け」じゃと語り合って小雪をわが子として大切に育てきたのだという。
大谷は、「よく云って下さいました。もとよりこの事実を順吉くんに云われてもそれで動揺するようなことはありません。かえってあなた方をより一層敬愛するにちがいありません。」さとは・・「ほえ、小雪があんまりええ気立ての娘だったで、うららも裏表のない気立てでないと・・親として恥ずかしいけになあ・・可愛い小雪、ずうっとうららのこの乳で大けんなっただけになぁ・・」彼女は空間を抱きよせるようにして、なかば笑い、なかば泣きながら目をつむると、大きく確信をこめてうなずいた。~
ここ数年、舟木さんが「絶唱」を「吉野木挽き唄」をプロローグとして、フルコーラスでとても大切にステージにのせていらっしゃるのが嬉しく、また、ご自身も、どこまでもこの作品の完成度を追求していらっしゃるように感じられて胸が熱くなります。「絶唱」で思いがけなく(当時の舟木さんとしては)最優秀歌唱賞を受賞したことが、重くのしかかり苦しまれた時期もあったとうかがっていましたので、今、舟木さんと「絶唱」との幸せな関係をステージ上で拝見するにつけこの歌、この作品のスケールの大きさをあらためて思うのです。
renge26tanpopo at 19:25│Comments(0)│舞台芸術